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懐かしくて新しい家庭の味を作る
「鷹岡のお惣菜屋さん」

代表取締役 渡辺公子 / 有限会社 渡辺商店 / 富士市鷹岡本町7-8
2018.02.28

手作りのお惣菜をメインに、生鮮食品から日用雑貨までを取り扱う渡辺商店。
もともと乾物屋さんとしてスタートしましたが、惣菜を販売すると瞬く間に大評判。家庭的な美味しさと懐かしい味わいが、老若男女をとりこにしています。
2017年4月に以前店長を務めていた渡辺友之さんが急逝し、 姉の渡辺公子さん(以下、匠)がお店を引き継ぎました。 富士市周辺で食べられているピーナッツなますや、甘いがんもどきのほか、野菜の煮物やきんぴらなど家庭的な味付のお惣菜が地元の人から人気です。2017年は静岡伊勢丹や、静岡伊勢丹コリドーフジでの催事に出店。手作りの素朴な味わいのお惣菜が、伊勢丹ファンの舌を唸らせました。

「富士・富士宮地区の家庭の味がズラリ!」

– どんな商品が人気ですか?

匠:白和え、ピーナッツなます、きんぴら、里芋の煮っころがし、それから週に1回出すフルーツサラダの人気が高いですね。うちはお米にもこだわっていて、なるべく玄米から摺(す)って使っています。だからご飯がとっても美味しくて、86歳の母が握るおにぎりが飛ぶように売れるんです。それから、富士の名物、甘いがんもどきは良い味付けのものを曜日ごとに、3軒の豆腐屋さんから取り寄せています。

うちは、「にんじん抜きで」といえば抜いてお渡ししますし、ご飯の量も調節OK。お弁当はサンキュッパで安いんですよ。私の好みで激辛の唐揚を売り始めたんですが、予想に反してなぜか人気商品になって、販売する日には必ず買いにきてくれるファンができました(笑)。

きんぴらは柔らかく作ってあるので、お年寄りでも食べられます。材料は機械でカットしないですべて手作業で切っているんです。だから食感もいいし、家庭的な味わいが出るんです。ある奥さんは、「渡辺商店のお惣菜を食卓に出しても、自分の家で作った料理だと思ってもらえるから、家事が楽ちんになるわ」と話していました。

– 惣菜の種類も量もたくさん作っていますね。

匠:まんべんなく売り切ってしまうので、売れ残りがほとんどないんです。売れ残りを翌日に回すことはないので、夕方になるとほとんど売切れ。

「昔ながらの商店は、食品の鮮度が気になる」という人がいるけれど、うちではなるべく毎日、新鮮な野菜や鮮魚、精肉を仕入れに市場へ行っているんです。野菜は有機栽培を販売している市場へ行ったり、その時期に一番美味しいものを仕入れています。もし生鮮食品が売れ残ってしまっても、お惣菜に変身してしまいますし、店頭で売っていた乾物も、消費期限が近づいたらどんどん使ってしまいます。

なるべくいいものを届けてあげたいじゃないですか。古いものを置くのが嫌なので、やっぱり気を使っていますね。

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「伊勢丹のバイヤーも驚いた地元の惣菜」

– 伊勢丹でお惣菜を販売したそうですが、手応えはいかがでしたか?

匠:伊勢丹で販売したのは、ひじきと切り干し大根の煮物とか、人気のきんぴらですね。それから圧力鍋でグツグツ煮て作った、骨まで食べらるサンマの煮物。商品名を考えなきゃいけなかったので、母の名前から取って「さんまのきょうこ煮」って命名したんですよ(笑)。たくさんのお客さんが買いに来てくれて、毎日あっという間に完売してしまいました。

商工会さんが伊勢丹さんとの橋渡しをしてくれたんです。バイヤーさんが視察に来たとき、ちょうど富士宮のジャンボ落花生が入荷していて、それがまたすっごく大きかったんですよ(笑)。茹でたてのジャンボ落花生を試食したバイヤーさんが、とても気に入ってくれて。結局、季節的に販売はできなかったんですが、富士・富士宮独特の惣菜を知っていただけて、催事での販売にもつながったので良かったです。

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「惣菜を買いに来てくれる人たちのために…」

– お客様はご近所の方が多いのですか?

匠:そうですね。 ご近所のお年寄りや年配の男性が多いです。伊勢丹での販売や、ラジオとテレビで紹介されたこともあってか、遠くから車で来られるかたも増えました。
近くにコンビニが2件できたので、割りと影響があるんですが、うちは500mlのドリンクを他店より安く販売しているので、わざわざドリンクだけうちに買いに来るお客さんがいらっしゃるんですよ。そのうちに惣菜を購入してくれる人もいますが、若いお客さんには、量り売りっていうスタイルが珍しいみたい。
それから、マルシェなどで委託販売したお弁当を食べた方が、住所を聞いてわざわざ買いに来てくれることもありました。

常連さんはみんな、うちのスタッフやほかのお客さんとお話しに来るんですよ。だから店先にはイスを置いて、夏は麦茶、冬は甘酒をふるまうこともあります。

– いま積極的にやっていることは何ですか?

匠:ご近所に買い物へ行けない方がいて、惣菜のほかにトイレットペーパーやシャンプーも届けて欲しいという要望があるんです。うちの店にないものは、配達がてら別のお店へ買いに行っています。すべての方にはできないんですが、昔から知っている人や「どうしても」という理由がある方には、うちの商品と一緒に届けてあげています。長年利用していただいているサービスみたいなものですね。

最近はコンビニでも宅配をやっていますけど、鷹岡の商店街のお米やさんも酒屋さんもみんな閉店してしまったから、今こうしてお店をやっている私たちが少しでも(配達を)やって、地域の人に喜んでもらえればと思っています。

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– スタッフの女性たちがみんな楽しそうに働いているのが印象的です。

匠:うちで働いているスタッフは、みんな長い間勤めてくれる人が多くて、お客さんと顔なじみになっている人も少なくないんです。
それに、私が何も言わなくても、みんな協力してお店を運営してくれるの。まるでわが家のごとく(笑)。家事のプロがそろってますから、みんな段取りも手際もいいんです。その日の目玉商品は、私が市場で仕入れながらお店に電話するんですが、もうツーカーなので、戻ると準備が整っているんです(笑)。
そのほうが、みんな「任せてもらえて嬉しい」って言うんですよ。しかも「朝3時から仕入れにいったんだから、もう休んで!」とスタッフに怒られてしまうのよ(苦笑)。みんながんばってくれるから、すっごくありがたい!

毎年暮れには、天ぷらやおせち用のお惣菜を並べてバイキング形式で販売するんだけど、いつも大行列。最後はみんなヘトヘトになって「来年はどうかしらね(やれるのかな)」ってなるのに、翌年もみんなちゃんとやってるんです。
もしひとりでもお仕事を苦痛に感じる人が出てきたら、やっぱりお店やっていくか考えますよ。接客業ですから、イヤイヤやっているとお客さんにも伝わってしまいますからね。

2017年に先代の社長だった弟が急に亡くなって、「このお店どうなっちゃうのかしら」って思ってしまったけど、みんな一緒にがんばってくれて、ようやく半年やって来ました。(運命が)ちゃんと上手に、良いように流れているんですね。
跡取りがいないので、この先誰かやりたい人がいれば引き継いでいってもらいたいのですが……でも、とにかく今は美味しいお惣菜を作り続けて行くこと。新しい味も取り入れつつ、古いものも守りつつ、買いに来てくれるお客さんがいる限り、お店を続けていきたいですね。

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代表取締役 渡辺公子
有限会社 渡辺商店
富士市鷹岡本町7-8
0545-72-5963


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