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ノウハウを活かし、
新分野へ果敢に挑戦する

代表取締役 渡辺貴寿 / 有限会社 渡辺工作 / 静岡県富士市厚原159-1
2018.02.28

1971年創業の渡辺工作は、渡辺さんご家族を含めた従業員6名の金属加工会社。「短納期・高品質・高生産」をモットーに、ローコストで小回りの効く製造と卓越した技術力で、長年、地元の製紙業界を支える縁の下の力持ちとして信頼を得てきました。
お話をしてくださった代表取締役の渡辺貴寿さん(以下、匠)は、約10年前に実父の渡辺弘幸さんから事業を引き継ぎました。その後、製紙機械部品や自動車部品加工のノウハウを活かし、福祉や医療機器の分野に進出。新しい分野へ果敢に取り組む、渡辺工作の挑戦が始まったばかりです。

「跡を継いだきっかけは寡黙な父のひと言」

– 中小企業で一番の問題といえば、跡継ぎや代替わりの問題です。家業を継ごうと思ったきっかけは何ですか?

匠:子どもの頃は家業を継ごうと思って、工業系の大学に通っていました。その頃、景気が良くなかったので、母から『好きなことをやったら?』と言われていたんです。当時キックボクシングが好きでコーチをやったこともあり、こちらでジムでも開こうかと思い、準備を進めていました。
先に弟が渡辺工作に入社して一生懸命仕事をしてくれて、あまり良くなかった事業に少しずつ先が見えてきた頃。いつもは寡黙な父が『できれば跡を継いで欲しい』と言ってきたんです。父も弟も昔気質の職人なので、営業が苦手なんですよ。ですから少しの間だけでも力になろうと、静岡へ帰ってきました。

-地元へ戻って、すぐに渡辺工作で働いたんですか?

匠:派遣で鉄鋼業や製紙会社を何件か回って、コネクションを作りながら仕事をし、その1年半後に渡辺工作へ入りました。
富士市は昔から紙を作っている会社が多いんです。渡辺工作も得意先に製紙業が多く、製紙機械の部品屋さんとしてやっています。『これは入って損はない!』と思って、派遣社員として製紙会社で働いていました。
生産ラインに入っていたんですが、7時間の勤務時間中、機械にエラーがない限りとくに動くことはなかったんです。自分としては、お金をもらうより製紙機械を見たかったので、ほかの社員さんが動いていないあいだも、機械を掃除したりメンテナンスしたりしてました。製紙機械が壊れたら修繕するところへ行って、部品がなければ自分が勝手に部品を作ったりメーカーさんのところに行ったりしていたんです。そしたら派遣をやめるときに大変なことになってしまって(笑)。ある日(上司に)急に呼ばれて、『派遣を切られるのかな』と思ったら、正社員になってほしいと言われたんです。しかも働いた会社3社で同じことを言われたんですよ。『いや、それは困る』とお断りしました(苦笑)。

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「もしかしてこの問題を何とかできるかもしれない」

-新しい事業として、医療や福祉の分野に取り組んでいるそうですが、今までやったことがない分野に進出したのは、なぜですか。

匠:売上が上がらない悩みを解消したかったのが理由のひとつです。医療分野の仕事としては、注射針の製造を行っています。弊社は、自動車部品や精密機械の部品などもやっているんですが、ほかの産業もやってると医療分野の遅れてる所がすごくよく見えてきます。ほかの産業ではもっとすごいことをやってるのに、医療分野からもらう設計図を見ると、10年前の技術を今でもやっているんですよ。『不効率なことをやっているから、もっとこうすればいいのに』と思うことがよくあったんです。現在、実際に5提案ほど出していて、大手の医療機器メーカーさん2社と話を進めています。

-医療分野の技術は、ほかの金属加工業者には真似のできないことなのでしょうか?

匠:他社にもできると思いますが、彼らは、車や半導体など異なった産業の現場を見てないんです。でも私たちは、ほかの現場を何度も見ているから、当事者が気づかないことを指摘してまったく新しい提案をすることができます。それから医療分野というのは特殊な業界で、試作品をいくつも作ったり臨床実験したりと、お金になるまでに10年はかかります。じっと待って、時間をかけて。そこまでやらないと参入していけない分野なんですよ。

-異分野へ参入するために、勉強したことや何かしたことはありますか?

匠:商工会の担当者さんに、医療福祉の分野をやりたいと相談に乗ってもらったら、『沼津高専で医療関係の講習会へ1年間通ったら?』とアドバイスをもらったんです。週に一度、朝から晩まで授業を受け、休まずきっちり通って「富士山山麓医療機器開発エンジニア養成プログラム」の終了書をいただきました。沼津高専はもちろん、東海大学や順天堂大学などから専門の先生が来てくださり、薬事法、医療分野で使える金属の知識、機械力学や応用学など、1年の間にありとあらゆることを学びました

-忙しいなかで通うのは大変だったと思いますが、印象に残った授業はありますか?

匠:『現在の医療介護の問題点』を学ぶ講義のなかで、介護で使う紙おむつの問題が取り上げられていました。一般の赤ちゃん用のおむつは普通に捨てることができますが、医療現場や介護施設だと、処理費用を払って産廃業者に処分をお願いしなければなりません。助成金もありますが、いつか出なくなってしまう日が来て、利用者の負担になってしまうそうです。
弊社は創業時から紙加工や製紙機械の部品作りに関わってきたので、すごく興味を引かれました。『渡辺工作なら、もしかしてこの問題をなんとかできるかもしれない』と。

-そこで次の事業の構想が浮かんだわけですね。それは形になりましたか?
匠:完成はまだですが、紙おむつ処理機の1号機を作って試運転までこぎつけました。まだまだ、臭いなどの衛生面や安全性において改良の余地がありますし、機械自体がものすごく大きくなってしまったので、もう少しコンパクトにして価格も下げたいですね。
弊社が受け継いでいる技術と製紙加工技術を知らなかったら、そこには目が行かなかったはずです。今まで弊社がやってきた仕事に感謝しています。

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「商工会さんがいたからこそ挑戦できたこと」

-会社で使う機械の購入には、県の「ものづくり補助金」を利用されたそうですね。

匠:はい。商工会に助成金が使えないかと相談し、「ものづくり補助金」を2回取得しました。
3〜4年前のことになりますが、まるで遠い昔のことのように感じます。最初の申請にとても苦労したからかもしれません。
1度目は医療分野だったんですが、時間がかかってしまって2回も落ちてしまったんです。これはすごく悔しかった!あきらめず失敗をバネにして、ようやく申請が通りました。

-どうやって改善したのですか?

匠:商工会から専門家の先生を派遣していただき、教えていただきながら申請書を作ったんです。
その時、ただ自分の思いを書けばいいというものではなくて、グラフや写真などを入れて見やすく、専門用語を多様せず、言いたいことを整理して書くというコツがわかりました。この時に得たノウハウがたくさんあったので、新しい機械を買ってやればできることを書いて、再び補助金を取得しました。そのほか、静岡県の「経営革新計画」の認証も取得しました。

-やりたいことを実現させるために、次々とチャレンジされていますね。

匠:そうですね。これも商工会さんがいたからこそ挑戦できたことです。日頃から密な関係を作って、自分のやりたいことや考えていることを話していると、いろいろな提案やフォローをしてくれます。商工会には情報のストックがたくさんあり、事業を軌道に乗せる手助けになるような情報を持ってきてくれることもあるんです。
現在進めている次の新規事業が前進したのも、『こういうのがあるみたいだよ』と、商工会の担当者さんが新聞記事を持ってきてくれたことがきっかけです。その記事をもとに、自分でいろいろな関係各所を調べて電話をしたら、トントン拍子で進んでいきました(笑)。

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「職人技の習得や継承が現在の課題です」

-順風満帆のようですが、これからの課題はありますか?

匠:父の職人技の習得や継承ができていないところが、現在の課題ですね。今は機械が良くなっているので、ほとんどのことは機械でできるのですが、やはり、人間の感覚だけで作らなければいけない部分がまだまだあります。自分で『よし、細く削ったぞ!』と思っても、父からすると『1000分の1太い』と言われてしまう。職人の手の感覚なんでしょうね。素人が削っていくと曲がってしまう素材もあって、作るものが大きくなればなるほど難しいんです。

-対策や練習などは行っていますか?

匠:従業員に練習させているのですが、やはりまだまだですね。父も70歳を超えまして、年相応にもの忘れが多くなったり、若い頃よりも動きが遅くなっていたりするのですが、仕事となると違います。技術は若い頃と変わらず本当にすごい。『こういう仕事の依頼があって、難しいから断ろうと思ってるけど』と相談すると、父は『いいよ、やってみるよ』と言うんです。ダメだったかな?と思って声をかけると『できちゃったよ』って(笑)。
父の技術を長年信頼してくださっているお客様もありますし、受注のうちの1〜2割は父でないとできない仕事なんです。『明日死んでしまったらどうしよう!』と思うほど(苦笑)、本当に切実な課題です。

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