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画期的な手法で業界を牽引する、
静岡のこだわりもの専門店

専務取締役 渡邊英樹 / 有限会社 駿河屋賀兵衛 / 静岡県富士市木島794−5
2018.03.19

富士川楽座に店をかまえる塩辛専門店「駿河屋賀兵衛」の専務、渡邊英樹さん(以下、匠)。もともと地元・富士市で本屋を経営していましたが、2000年、道の駅「富士川楽座」の開業とともに、静岡の海産物や寿司、塩辛などを扱う「駿河屋賀兵衛」をオープン。2013年には秋葉原のマーチエキュート神田万世橋に塩辛バル、秋葉原CHABARA内に塩辛専門店をオープンさせました。さらに2016年には神奈川県川崎市にも塩辛バルを出店。富士川地区から静岡県を活性化させる、たくさんのアイディアや人脈をお持ちの渡辺さん。持ち前のユーモアとパワーで商工会会員を引っ張る、頼もしい副会長です。

「静岡生まれのこだわり塩辛が東京でヒット」

– 富士川楽座のほか、東京・秋葉原には「駿河屋賀兵衛」の名前で2軒のお店を出していますね。

匠:はい。うちは秋葉原に2つのお店を持っています。ひとつが「塩辛専門店」で、もうひとつはいわゆる「塩辛バル」なんですよ。2店の距離は500mぐらい離れていて、ちょっと面白い関係性で結ばれているんですよ。
塩辛専門店へ行くと、店内では60種類の塩辛が試食できるんです。これを先に味見したお客様は、バルに流れていきます。逆に、先にバルへ行って、塩辛を使った美味しい料理を食べると、料理に使われていた塩辛を買って帰りたくなるから、お客様は専門店へ流れていく。こうやって、両方の店でお客様をキャッチボールできるようになってるんです。川崎のお店も同じような仕掛けでやっています。

– 秋葉原にある塩辛バルは、いろいろなテレビ番組でも紹介されていて、とても人気のあるお店ですよね。駿河屋賀兵衛さんで取り扱っている塩辛は、今、何種類ありますか?

匠:塩辛については現在64種類あります。そのうち試食できるのは60種類。テレビ局の話によると、全国で一番種類が多いと言うことです。東京には塩辛専門店ってないんですって。
でも塩辛ってね、滅びゆく産業なんですよ。デパートで塩辛を売ってる売り場に、どのくらいの品数があると思いますか?銀座の某有名デパートでも4アイテムしか置いていなかったんですよ。他のお店ではもっと少ないかもしれない。
そんな世の中なのに、デパートからひっきりなしに「駿河屋さんの商品を置かせてくれないか」と引き合いがくるんです。でもね、「悪いけど、置くだけでは売れないよ」って言うんです。うちはお客さんに試食させることができなければ、売らないことにしています。あとは、レシピの紹介と盛り付けの提案ができること。それができないと絶対に売れないってことがわかっているから、(委託や出店の)絶対条件なんです。

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「積み重ねで必ず勝つ、独自の世界を作りたい」

– 富士川楽座のお店では、出店の段階から画期的な仕組みをいろいろと考案してきたそうですね。そもそも、なぜ塩辛や海産物のお店をやろうと思ったのですか?

匠:私たちは、以前から富士川地区で多くのまちおこし事業に取り組んできました。それを集大成する事業が、富士川楽座の事業だったんですよ。「富士川の地域拠点化」という事業もありまして、私たちも商工会の役員として入って、まちづくり会社の準備委員会をやるために参加してきました。
そのとき「富士川楽座で何かひとつお店をやったら?」と言われて、もともとやっていた本屋さんをやめて、やれるものは何だろうと考えました。静岡の魅力や特徴って一体何かな?と考えると、やっぱり海産物だと思ったんです。今まで海産物を取り扱った経験なんて、まったくないんですけどね(笑)。

– そこで「駿河屋賀兵衛」が誕生したんですね。

匠:駿河湾などの海に面していて海産物がよく獲れて、静岡県の内陸では鱒の養殖もしていますから、やっぱり水産物が一番いいだろうと。
それで、一番最初にお寿司屋さんへ修行に行きました。当時の日本の高速道路では一切、寿司は売ってなかったんです。一番大きいサービスエリアの海老名でも、当時、海産物を置いているコーナーは、驚くほど小さかったんですよ。「これはもう夜逃げすることになるんじゃないかな」と本気で思いました(苦笑)。

しかも、道の駅やサービスエリアには規制がありました。カレーの具ひとつ取っても非常に細かい規制があったので、「高速道路のごはんは必然的に高くてまずい」っていうのが常識になってしまっていたんです。
もうひとつは持ち帰りの心配です。それも規制と関係がありますが、気温の高い日に海産物をどれだけ持って帰れるのかということ。

そのハードルをどうやって解消していけばいいか、というのが我々の課題でした。
持ち帰りの面では、保冷の実験をやったんですよ。例えば1 kg の重さの冷凍品を8時間持たせるには、どのくらいの保冷剤をつければいいか。それで全商品の保冷サービスを始めたんです。当時としては画期的で、成功した部類になります。それ以来、他のお店やサービスエリアでも、うちと同じような保冷サービスが広まっていきました。
そのうちに、県内でも有名な寿司屋さんが楽座に出店してきたんです。その頃の私たちは駆け出しで全くの素人。我々は素人のお寿司だけど、今日より絶対明日の方が美味しくできるという道を信じて、味や技術に磨きをかけていきました。積み重ねで必ず勝つ独自の世界を作りたいと思ったんです。

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「地元生産者・企業との連携プレーで業界初の生配送を実現」

– お店だけでなく、インターネット通販でもかなりの売上を上げているとお聞きしています。

匠:塩辛が話題になっているけど、駿河屋賀兵衛は本来「静岡のこだわりもの専門店」ということでの位置付けでした。看板にしようと思ったのは寿司、桜えび、しらすの3つなんです。
ひとつ目の代表は、押し寿司の「富士山ますのすし」、次に「純生桜えび」。桜えびについては他でやれないことをやろうと思っていたんです。普通、「生の桜えび」っていうのは冷凍品のことを指すんです。冷凍の桜えびはいろんな所で売ってますが、うちでは「純生」とうたって、凍らせない生のままで配送するというのやったわけです。「純生」っていうのは、えびが完全に凍っていなくて、甘みが強くてふっくらしてるもの。

漁がある日だけお客様から予約を頂いておいて、船が出るときに、予約者に対して一斉にメール配信をするんですよ。そのあと、出荷日と到着日の連絡をして、受け取れるお客様だけに送ります。配送できるのは1日で届くところだけ。北海道や沖縄は1日以上かかってしまうので、大変申し訳ないけれど断ってしまうんですよ。
加工は、この地域でトップの企業にお願いしています。船をつけて桜えびを持ってきたら、すぐに異物の選別などの処置をやってもらう約束をしてあるんです。
この「純生桜えび」は、楽天市場で売上が連続1位を獲得しているんですよ。

3つめの「しらす」は、田子、御前崎、舞阪といった県内3つの港から取り寄せています。舞阪が全国一のブランドで、築地市場で一番高い評価が出ているんですよ。
しらすは冷凍の生。うちはー60℃で保管するようにしています。これが、解凍した時にちゃんと透明になる温度なんです。

溶けかかって苦味の出たしらすを「どろめ」といって食べる地域もあるようなんですが、やっぱり静岡のしらすは、透き通った生しらすというのが(一般の)イメージですし、私たちもとれたての美味しいままを提供したいので、温度管理には気を配っています。
それから、全国で初めての商品として、生しらすの塩辛も作っています。しらすで塩辛作るのはすごく難しいんですよ。本マグロの冷凍技術を使っています。この技術なら細胞が壊れずドリップが出ないから苦味が出ないんです。

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「商品開発の極意はちょっとした工夫ひとつ」

– 次々といろんなアイディアが出てきますね。やっぱり商品開発は面白いですか?

匠:商品開発は面白いですよ。でも何回もやってみるから、採算を合わせるのが大変(苦笑)。外部からも頼まれることがあるんだけど、商品開発って、じつは簡単にできることなんですよ。一番簡単な方法はシール1枚あればできちゃう。
店で骨を取ったアジの干物を売っていたんだけど、前はあまり売れなかった。それで「骨抜きアジ、骨を取らなくてもいいですよ」っていうシールを1枚貼ってみたんだけど、それだけで驚くほど売れたんです。
それからもうひとつ。今一番売れてるお寿司が「まぐろの漬けにぎり」なんだけど、以前は全然売れなかったんだよね。それで、従業員に「2万円出すから誰か売れる方法考えて」って言ったら、一貫ずつに少量のゴマを散らして、容器をちょっと高級な色みのものにしたんですよ。そしたら一番売れる商品になったの。それが商品開発なんです。

– 簡単な工夫ひとつで商品が売れるんですね。それに、従業員さんのモチベーションも上がりますね。

匠:お店で配布している塩辛を使ったレシピ集の料理も、うちの従業員がレシピを考えて作っているんです。しかも撮影用の料理づくりから、盛り付けやテーブルコーディネートまでやってるんですよ。

– 渡邊さんは、商工会で副会長をやっていらっしゃるそうですね。副会長として心がけていることはありますか?

匠:そうですね。埋もれているすごく良い商品だとか、素晴らしい人材がいっぱいいるんですよ。今、それが発掘できず、表に出てこないっていうのが現実なんです。それを何とか、ひとりずつでいいから拾い上げて、世に送り出したいと思っているんですよ。
ですから、この「一社一匠」という企画は、富士市の中小企業にとって、すごく良い機会だと思っています。

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専務取締役 渡邊英樹
有限会社 駿河屋賀兵衛
静岡県富士市木島794−5
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