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その先にある「喜び」を提供する
ご近所の気軽に立ち寄れる車屋さん

代表取締役 田林英一 / 株式会社ナカノオート / 静岡県富士市大淵3428-2
2019.03.18

富士市大淵にあるナカノオートは、先代が50歳のときに脱サラして始めた、創業56年になる自動車整備と中古車販売のお店です。
二代目の田林英一(以下、匠)さんは、元銀行マンという経歴の持ち主。33歳でこの世界に飛び込み、一から勉強を始め、損害保険や整備士免許など各種資格を取得しました。
商工会には敷居が高いというイメージがあったものの、友人のすすめで活用してみることに。それにより商談スペースの整備、店内外への効果的なポップの貼り出し、ホームページリニューアル等々を実施したところ、近場のお客様が立ち寄るようになるなど効果があらわれました。

「売上げより信用を積み重ねる」

– 競合の多い業種だと思うのですが、御社のこだわりや強みをお聞かせください。

匠:当社は父が26年前に脱サラして始めて、今も76歳で現役なのですが、私からみていると、お人よしというか、どうもお客様の立場を第一に考えてやってきたのではないかと感じることが多いです。
というのも、みかんとかケーキとか、何でもない時でもお客様が父に差し入れを持って来て下さることが多くて(笑)。多分それは、気持ちで伝わっているところがあるからなのかなと。

いま私も、たとえば、修理で来られたお客様に対し、故障の程度にもよりますが、「修理しないでこのまま乗り続けて、今回かかる修理代は次の車に乗せ換えてはどうでしょう」とアドバイスすることがあります。それで、「たしかにそうだな」で終わってしまうこともあります。
中古車販売では、ちょっと問題があるような車が販売されていることもあると、この業界に入って聞いたことがあって、以来、とくに新規の方に中古車を販売するときには気を使っています。「この車はここがすこし調子悪いです、この辺もちょっとよくないです」と、セールストークのはずがダメ出しになってしまっていますね(笑)。
一見、商売にならないように思えますが、結局、まわりまわってつながっていくのかなと、そういった、売上げより信頼を勝ち得ようというところがあると思います。
その積み重ねでずっときているところが、こだわりと言えばそうなのかもしれません。

もともと私は銀行員だったんです。そこでは「今月20件取ってきなさい」といったノルマがあって、ある意味、数字だけを求められていました。数字が目標になると、だんだんお客様を見ても数字にしか見えなくなってくるんです。1人、2人、じゃなくて、1件、2件って。そしてそれは、絶対に相手に伝わるんです。

私のところにも業者さんが営業に来ますが、結局、自分で営業をしていた経験があるから、心情が嫌という程わかるんです。 売ることだけが目標になっているのがわかる。
なぜかというと、客である私の都合は関係なくて、自分が話したいことだけをずっと話しているから。忙しいときにそれを何回もやられると「もういい」ってなりますよね。
数字だけを求めてガンガンいくと、そうやって逆にお客様が離れていってしまう。
だから、一見売り上げが上がらないように思えても、もちろん、経営者としては利益も考えるし、ノルマ的な目標数値もあるのですが、それよりやはり信頼を大切にしたいなと思ってやっています。

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「銀行員からのスタート」

– 家業継承で銀行を辞めたのですか?

匠:いえ。いろんな意味において将来を考え退職しました。辞めてすぐは、1年間ワーキングホリデーでオーストラリアに行きました。
ちなみに、妻はもともと銀行のお客様だったのですが、ワーキングホリデーに行くために英会話を習ったりしているというのをそのタイミングで偶然知り、意気投合したという経緯があります。
私は英会話の勉強をしないで行ったものですから、オーストラリアに向かう飛行機の中で 「コーヒープリーズ」と言ったらコーラが出てきたんです。「これが今の俺の実力なんだ」と思って飲んでいましたけど、ショックでしたね(笑)。
ただ、向こうへ行って、なぜワーキングホリデーでここへ来たのかを現地の方々に聞かれたとき、「自分は会社を辞めて、楽しむためにここに来た」と言ったら、誰もがすんなり納得してくれたんです。日本では、「親が悲しむぞ」「別の銀行へ行けばいいじゃないか」などと非難の的でしたから、かなり驚きました。
家業に入ったのはワーキングホリデーから帰ってきた後です。今から10年前に法人成りしたのですが、それと同時で33歳のときでした。勤めていた銀行は私が辞めて間もなく破たんしたので、どのみち、こうなっていたのだと思います。

– 元銀行員としては、全くの異業種に飛び込んでみてどうでしたか?

匠:まず驚いたのが、利益率の低さです。設備投資等にすごく費用がかかるのですが、その割にタイヤ1本替えて1000円出るかどうかです。技術がなければできない業種なのにそんなに儲かっていない。あらためて自分がやっていこうとした時に愕然としました。
職業病でもないですけど、学校を卒業して22歳の時から叩き込まれていますから、損益分岐点とか利益率とか、シビアに見てしまうんですその辺は(苦笑)。
商工会さんからは、「会計の基礎がしっかりできているのは大きな強みですよ」とおっしゃっていただくこともあるのですが、だとしたら、銀行員時代の経験が役だっているのかなと思います。ただ、自動車の知識は全くなくて、33歳で一から勉強を始めました。

– 実際に仕事を始めてみて、大変だったことはありますか?

匠:かなり特殊なカスタマイズのご依頼をいただいて、部品の調達等々で通常より手間取ってしまったことがあります。後に、同車種の改造を専門に扱う業者さんがあって、全国からお客様がそこへやって来るということを知ったのですが、この経験から、得意分野を持つことやターゲットを絞ることの重要性がよくわかりました。
そこでうちは、改造車や外車ではなく、国産車を主として、日常的に使用されている軽やミニバンに力を入れていこうと決めました。
それから、父の既存のお客様達がやはり年齢層が上がってきて、免許を返してしまう人も増えてきたので、自分のお客様としては、 同年代の人達、ファミリー層がいいかなとも考えるようになりました。
ですから、大変ではありましたが、技術的なことを学べたうえ、こんなふうに自分達の立ち位置みたいなものに気付かせてもらいましたし、得意な分野というのが逆に見えてきたので、本当に良かったです。

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「敷居が高かった商工会」

– 新たなお客様に向けて、具体的にどのように展開しているのですか?

匠:町の車屋さんって、はっきりいって入りづらいですよね。だから、なるべくその敷居を下げたいということで、商工会さんを通じて持続化補助金をいただき、ポップを作って貼り出したり、商談ができる接客ルームも作ったり、ホームページもリニューアルして、女性向けで分かりやすく柔らかい感じにしました。
ここは通勤等でけっこう交通量があるのですが、お陰で最近は地元の、この通り沿いの方がよくいらっしゃいます。電話での問い合わせをはじめ、ネットで調べて連絡したという方もちょこちょこ出てきました。
あと、幸か不幸か、店先にある赤信号で止まると、別に車が欲しいわけではなくても見てしますよね。だから売りたい車はそこの停止線のあたりに、今月のイチ押しみたいな感じで展示しています(笑)。

じつは、父の代から商工会会員だったのですが、利用したのは今回が初めてなんです。やはり、敷居が高いというか、見えない結界があって(笑)利用しづらいというのがありました。私の場合、友人に「商工会さんに相談してみるといいよ」と教えてもらえたのでよかったんですよね。

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「車をとおしてその先にある喜びを分かち合う」

– この仕事をしていて良かったことは?

匠:ある会社の社長さんから、「孫と山梨に行くから、孫も載せられる四駆のミニバンがほしい」と言われ、がんばって良いものを探したことがありました。ごひいきのお客様だったので、想定していた車種よりグレードアップしたものを予算内で納車したんです。
私としてはそれで良いことができたと思っていたのですが、「どうでしたか社長」と聞いたら、結局、車のことではなくて、「孫と一緒に旅行に行けたのが良かった」と、満面の笑顔で言われたんです。
そこで、「あ、俺がやっているのはそこなんだ」と気付きました。かっこつけて言っているわけではありませんが、車を売っているのではなくて、車に乗った先にある、孫と旅行に行けたとか 思い出が作れたとか、そういうことをしているのだということですよね。車はそれを実現させるための手段なのだと。そのことに気付いたら、仕事が楽しくなってきたというか、張り合いが出てきました。
ただ、今度それが逆にプレッシャーになったりもして、「息子とディズニーランドに行くから車をみて」というお客様の時には、途中の高速で何かトラブルでもあったらまずいなとか、あらゆるシーンが浮かんできて、必要以上にみてしまったりとか(笑)。

– 今後の目標や夢は何ですか?

匠:引退後にマレーシアに住むことです。死ぬまで現役でこの仕事を続けていくというのもそれはそれでいいのですが、夢というか、ご褒美がないとがんばれないじゃないですか(笑)。そのためにも、車をとおしてその先にある喜びをお客様に提供し続けていけたらいいなと思ってやっています。

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information
代表取締役 田林英一
株式会社ナカノオート
静岡県富士市大淵3428-2
0545-35-5584
http://www.nakanoauto.com/

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