家族連れから「帰りにちょっと一杯」まで
富士川駅前で三代続く味処
代表 大木秀仁 / 味処平和 / 静岡県富士市中之郷1236
2019.03.18
また、ワンコインランチの提供や、国道側駐車場の新設など、時流をくんだ取り組みをはじめ、昨年は、小規模事業者持続化補助金の活用でトイレや宴会場等の改修も行い、ファミリー層や女性客、高齢者の方々からも好評を得ています。
「駅前で三代続く味処」
– 創業はいつですか?
匠:昭和17年です。創業者は私の祖父で、町内の料亭で修業をしていて、それで独立して駅前にお店を構えました。
当時は、今の富士川駅が「岩淵駅」という駅名で、駅舎はちょうど店の前にありました。今のこのお店になってからは38年になります。私の父の代になってから建て替えて、すこし店舗を広げました。
私は18歳で修行に出たのですが、最初は東京の「煉瓦亭」という洋食屋さんで修業させてもらいました。その後、沼津と三島にもいて、和食や創作料理の修業もさせてもらって、30歳で戻ってきました。
– 経営側になるということでのプレッシャー等はなかったですか?
匠:先先代からやってきてお客さんがついていてくれたというのがあるので、その不安はなかったですね。それとやはり、地元だというところでの安心感がありました。
ですが、結局そのお客さん達を今度は自分のお客様にしていかなければならないということ。それから、全く同じ事をやっていてはいけないなと気負っていたところはありました。それで、メニューを試行錯誤しながら変えてみたりもしました。
一方で、初代から変わらずに引き継いでいる味というのもあります。たとえば、出汁のひき方は創業時からのものです。そのため、丼ものに関しては、年配の方々からよく「やはりこの味だよね」と喜んでいただいています。なかには、私が小学生のときからずっと通って来られている方もいて、だからもう30年来のお客様ですよね。
この辺は製紙会社さんなんかも多いのですが、「僕は20年前にあそこに勤めていて、よくここに食べに来たんだよ」とか、「昔は仕事帰りに寄って飲んでたよ」という方もいますね。
それから、「退職校長会」といって、毎年12月に庵原地区の退職した校長先生達の宴会があるのですが、それをうちでずっとやらせてもらっています。そうすると、「昔、富士川の小学校にいて、ここへはよく飲みにきていたよ」という方もいます。
小学校時代の担任の先生がその後校長になって来られたという嬉しい再会もあったりして、そういうときは本当に地元でやっていて良かったなと思います。
「伝統を守りつつ時流に合わせて変化」
– 自分で生み出した味やサービスもあるのですか?
匠:そうですね。同じものばかり出していても飽きられてしまうので、とくに夜のおつまみはなるべく新しい物をとり入れるようにしています。
夜は女性同士で飲みに来られる方も多いので、創作料理等、女性にも好まれるメニューをいろいろと考えて出しています。
他にも、常連さんでも飽きがこないよう、ちょこちょこおすすめメニューを変えてみたり、新しいメニューを作ったらフェイスブックに載せるなど、そういった工夫をしながらやっています。
最近はまた、通常メニューに加えてワンコインランチもやっています。
– ランチがワンコインは嬉しいですね!ですが、経営側としては大変ではないですか?
匠:そうですね。ただ、それでお店に入ってもらえて、うちの味だったり、「夜はお酒も飲めますよ」といったことを知ってもらえればいいのかなと思っています。
もともとは、店を活気付けたかったということがあるんです。
昔は、近くの製紙会社の社員さん達がお昼に来てくれていたのですが、今はどこも社員食堂を持つようになって、すこし昼の部の売上げが落ち込んでいたんです。
それで、利益云々以前に、お客さんに来てもらえて回っていけばそれでいいのかなということで始めたんです。
やはり、閑古鳥が鳴いている食堂だと作っているこっちも張り合いがなくなってきますしね(笑)。お陰様で、良い方向に流れができている感じです。
2年前に駐車場を作ったのですが、昼時は、近くの工事現場で働いている方や営業マンの来店が増えましたね。
じつは、昔は駅側がメインの通りで、もともとの駐車場が駅側にあります。今は旧国道をみんな車で通るので、そっちが裏側になってしまって目立たないわけです。
それで、旧国道側からもわかりやすくて入りやすいところに駐車場を作ったんです。
以前からの場所と合わせると、20台程度まで停めることができます。うちは法事なんかもやっているので、そういうときにも便利に使ってもらっています。
– 店内に入るといろいろなお酒にも目をひかれますね。
匠:常時40~50種置いています。酒屋さんとも相談して、今どんなのが人気なのかを聞いたりしながら入れています。
一時期ウイスキーを飲む人が少なかったのですが、今は、男性も女性もハイボールが多くて、やはりお酒も時代によってけっこう変わりますよね。ちょっと前までは芋焼酎だったんですけど。
日本酒は、うちでは冷酒を短冊で表示して出していますが、酒屋さんとも相談しますし、お客さんとの会話の中でも、ご要望をお聞きしたりしながら、常にいろんな新しいものを入れていこうと思ってやっています。
同じ名前でもラベルの色が違うものもあって、これは使っている芋だったり麹が違っていて、全部味が違うんです。そうすると、端からちょっとずつ全種類飲んでみたいというお客様もいて、いろいろなリクエストに応えながらやらせてもらっています。
– 築38年ということですが、良い意味で古さを感じさせない店内ですね。
匠:去年、商工会さんに補助金申請をさせてもらって、トイレの改修をはじめ、天井と壁紙を全部張り替えたんです。
2階の宴会場に洋式トイレが一つあったのですが、そこ以外が全部和式で、やはり高齢の方だと大変ですよね。うちの母親なんかも膝が悪いもんで、膝が痛いにも関わらずわざわざ2階のトイレに行ってたんです。
今は和式でできないというお子さんも多くて、お子様連れで夜に食事にこられる方には、2階のトイレを使ってもらっていました。
改修したら、「ああ良かった、やっと洋式になった!」と、何人ものお客様に言われました(笑)。本当に良かったです。
―お子様連れでいらっしゃる方もいるのですね。いろいろなお客様がいますね。
匠:はい。夜は家族連れで来られる方が結構いますね。だから、ポテトフライやデザート等、お子様も喜んで食べられるようなものをと考えて出したりしています。とくにお盆なんかは、「親戚が来たからお座敷使わせて」といったリクエストも多くて、おじいちゃんおばあちゃんからお孫さんまでみなさんで来ていただいています。
趣味でバイクに乗っているのですが、その仲間が遠くから来てくれることもあります。一番遠い方だと四国から来られます。毎年お盆は必ずこちらに仲間内のツーリングでやってきて、うちに寄っていってくれるんです。
– この仕事をしていて大変だったこと辛かったことはありますか?
匠:やはりお客さんが来ない時はだいぶ落ち込みますよね(笑)。それ以外の、忙しくて大変といった仕事でのことは苦労だと思ったことはないですね。修行時代、沼津港内のお店にいて、観光地だったので一日に何百人というお客さんを相手にしていたので、そのことに比べれば、多少忙しくてもなんとかなるというところがありますし、やはり自分が選んだ道なのでね。
だから一番大変なのは、来てもらうためには何かをしなければならないので、そういうのを考えるところですかね。ふさぎこんでいてもしょうがないですからね(笑)。
「共存共栄でにぎやかなまちに」
– 今後やりたいと思っていることや目標があれば教えてください。
匠:町内にもっと飲食店があったらいいなと思っています。昔はこの駅前の辺が「柳通り」と呼ばれていて、飲食店もたくさんあったんです。それが、私がこっちに戻ってきてからでも8軒くらいなくなってしまいました。
同級生や商工会仲間の方ともよくその話をするのですが、やはり、全体的ににぎやかにならないと、相乗効果みたいなものが全く出てこない。うちがここに一軒だけポツンとあっても、たとえば、宴会をしてもらっても、二次会をする場所がないとなると、それじゃ最初から富士駅の近くでやろうということになりますよね。
儲けたいのはみんな一緒だと思うのですが、ただ一人勝ちではなくて、みんなが伸びて、飲食店同士で共存共栄ができればいいのではないかなと思いますよね。
私もそうですが、同じお店で飲んだり食べたりしていると飽きてくるというのもあるので、時には他のお店へ行っても、「でもやっぱり平和がいいね」「今日は平和で食べたい気分」などと言ってもらいながら長くお付き合いできるのがベストではないかと思っています。
私が小学生の頃は、この通りでお祭りも盛大にやっていました。それでよく、商工会仲間の方と、「柳通りでまた祭りをやろうよ!」と話すこともあります。ちなみに、その祭りが、河川敷で花火もあがる今の「富士川夏まつり」の原型で、もとは富士川駅前でやっていたものです。
「他に商売をやっている人達で協力し合ったらできるんじゃない!」などと、熱く語って飲んでいるので、結局酔っぱらって終わるのですが(笑)。でも、すこしでも地元が活気づくよう、にぎわいが戻ってくるよう、努力していかなければならないなと思ってやっているところです。
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代表 大木秀仁
味処平和
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