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十人十色のお別れに応えたい
全国でも希少な「美粧衛生師」がいる葬儀社

代表取締役 星野正人 / 有限会社 星野葬祭 / 富士市中之郷7-1
2020.04.22

昭和30年設立。祖父の代から家族で継いできた星野葬祭は、家訓があるわけではないけれど、「お客様の立場になって親身に尽くす」という姿勢が揺るがぬポリシー。
社長の星野正人さん(以下、匠)が、国内でたった8人しかいないという「美粧衛生師」の資格を取得したのも、自身の体験をふまえ、よりご遺族の心に寄り添えるお別れを形にしたかったからでした。
地域に根差し、信頼される存在であることはもちろん、多様なお別れの形に応えることで、遺された人たちの心のケアにも尽力しています。

「両親の姿から学んだ仕事の精神」

– 御社のこれまでの経緯を教えてください。

匠:祖父が創業して、平成3年に父が個人経営から有限会社にしました。私自身は次男ということもあり家業を継ぐとは思っていませんでした。大学も電子工学科に通っていました。
ところが在学中、すでに家業に入っていた兄が体調を崩してしまったんです。それで私が、大学に通いながら土日だけ実家に戻ってきて、兄の看護や家の手伝いをするようになりました。それで最終的には、私が継ぐことになりました。

– 家業を継ぐにあたっては、先代からの教え、家訓のようなものはありましたか?

匠:家訓というわけではないのですが、「お客様の立場に立つ」というのが両親の姿から伝わっていましたね。とくに母はかなりサービス精神にあふれた人で、「うちにせっかくお葬式を頼んでくれたのだから、何か他にもサービスをしてあげよう」というので、たとえば、お供物を買ってお寺に届けるときは、こちらの人件費とか手数料はまったく度外視で、そのレシートの金額のままお客さんに請求していました。

あらためて言葉で言われたことはありませんが、そうしたことはずっと肌で感じていました。いまは会社組織になって従業員もいますからまったく同じことはさすがにできませんが、その精神は大事にしています。

「全国で8人しかいない美粧衛生師」

– 他にも、御社ならではといった特徴はありますか?

匠:一番の特徴は「美粧衛生師」という資格を私が取得していることだと思います。エンゼルメイク、もっと昔だと「死化粧」とも言いましたでしょうか、お別れの際のお化粧です。

一般的なメイクができればエンゼルメイクもできるかというと、これがちょっと違うんです。たとえば、人は亡くなると油分がなくなっていくので、いわゆる、化粧のノリが悪くなってしまいます。ですから、そのような状態でも映えるような専用の化粧品を使うなどします。

病院でもエンゼルケア、つまり死後の処置の一つとして似たようなことはされているようですが、何と言いますか、あまりこだわりがないといった印象を受けます。たとえば、生体と同じ化粧をしていたり。あと、人は亡くなると血が固まらなくなりますから、出血が表に出てこないよう適切な処置が必要になります。それを単に絆創膏でしのいでいたり、というのも目にすることがあります。

息を引き取ってからご遺体とお別れするまでというのは、なかなかの非日常なので想像がつきにくいかもしれません。ですが、ダメージを最小限にしてその人らしいお別れができるように、私たちはご遺体のケアについて多面的に学ばなければなりません。
ご遺体に触れるご家族など周りの方はもちろん、医療従事者や私たちのような葬儀関係者も感染リスクにさらされることなく、つつがなくお別れができるようにするのもエンゼルケア、エンゼルメイクを担う者の使命なんです。

– そもそも、どうしてそのような資格があることを知ったのですか?

匠:以前、ご遺体の感染管理について学んだことがあったのですが、その際に講師をしてくださった方から教えていただきました。

じつはこの「美粧衛生師」の資格を与えていただいているのは、現在全国で8人しかいません。というもの、ご遺体と向き合うという実践のなかでしか得られないことですし、これまでに努力で培ってきたものを引き継ぐわけですから、これから先も責任を持ってやれる人、途中で投げ出さない人でなければならない、ということで、そこを先生が認めて許可をして初めて門戸が開けるからです。

– 誰もが学べるわけではない狭き門なのですね。どうやって先生に認めてもらったのですか?

匠:じつは私自身、妻を亡くしているんです。妻は脳内出血で、頭痛を訴えているうちに急変し、救急車が到着した時点で意識が無い状態でした。その後、医師や家族と相談して延命措置を選んだのですが、最期は点滴投与などの影響でむくんでしまって、正直見るのがかわいそうな顔になってしまったんです。どうにかしてあげたかった。そうした思いが先生に伝わったのかもしれないですね。

– そうだったのですね。エンゼルメイクを行ううえで心がけていることはありますか?

匠:専門的な知識だけに頼らず、必ずご家族などの近親者にヒアリングすることですね。それなしには、いわば、一般的にいいとされる顔しか作れなくなってしまいます。
たとえば、働き者のおばあちゃんだったとしたら、こちらでキレイに化粧を施した故人を見てご家族は、「これはおばあちゃんじゃない」「生前の面影と違う」と言うかもしれない。あえて日焼けした感じだったり、シミやほくろを残した方がいいと思われるかもしれないわけです。優先されるのは「どんな形でお別れをしたいか」ということなんです。

「研鑽を積み多様なニーズに応える」

– 葬儀自体も最近は多様化が進んでいる印象を受けるのですが。

匠:そうですね。以前は豪華に祭壇を飾ることが多かったですが、それに限らず、今は亡くなられた方の好きなもの、たとえば桜を飾ったり、そういったアレンジをすることも多くなりました。

もちろんプロフェッショナルとしての知見も欠かせません。「遺体感染管理士」の資格も取得しているのですが、たとえば、亡くなられた方が肝炎であれば、血液を介してご家族に感染してはいけませんから、リスクを最小限にするような処置を行います。この辺りはご遺体を見て推測で動くこともありますね。

– そういった知識を養うなどの見えない努力も大きそうですね。

匠:はい。エンゼルメイクなどは昔に比べて言葉も知られるようになりましたが、先ほどもふれたように亡くなった後のケアに対して認識が薄いところも見受けられます。私自身は有資格者としてこれからも研鑽を積んでいきたいですね。

そもそもこの仕事自体が24時間365日なんですよね。亡くなる人は当然待ってくれないわけですから。体力勝負ですし、そう言いながらもやはり知識・スキルを積み重ねて会社も成長させなければならなりません。

「一人ひとりに寄り添える存在でありたい」

– なかなか大変なことですよね。

匠:それでも、いまは会社組織になったので休暇もとれるようになりました。それとやはり商工会さんのサポートにも助けられています。ちなみに美粧衛生師の資格は商工会さんの紹介で小規模企業経営力向上事業費補助金を受けて取得したんです。さらに一昨年末には県の経営革新計画の承認を取得することができました。

ここから車で15分程のところに「由比会館」という当社のセレモニーホーがあるのですが、それもやはり商工会さんに相談して、「小規模企業経営力向上事業費補助金」でオープンすることができました。ちなみにここは、元々スーパーマーケットだったところを改装して建てたんです。

実際の建設コストを比べると一目瞭然ですが、一から葬儀場を作るよりも半分くらいの値段で抑えられるんです。つまり、必要経費を抑えられる分、お客様にとっての葬儀費用をお安く提案できるわけです。

– 代々の精神を受け継がれているのですね。今後の目標などを聞かせてください。

匠:地元に根差した企業として地域の文化や風習も大切にしながら、遺された方々の心に寄り添い、精一杯のグリーフ(悲嘆)ケアに繋げられるように努めていきたいと思っています。

それには、あらかじめ知識を持っておくことが求められます。仮に同じ出来事であっても、各々によって心の負担は違います。また、今後を考えると趣向やスタイルもますます多様化してくることが考えられます。「最近こういう葬祭のスタイルがあるからやりましょう」ではなくて、亡くなられた方の人生だったり、ご遺族の気持ちやご希望に寄り添った結果、行き着く先にその葬祭のスタイルがある、という風にしたいですね。
そうしたことをとおし、グリーフワークとして「今を生きていることの“生”の大切さを見つめ直し、これから生きていく意義を見出せる」心のケアを含めたサポートまでもを目指していきたいと思っています。

information
代表取締役 星野正人
有限会社 星野葬祭
富士市中之郷7-1
0545-81-0605
https://hoshinosousai.co.jp/

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